大阪地方裁判所 昭和54年(人)6号 判決
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【判旨】
意思能力のない幼児を監護するときは、当然幼児に対する身体の自由を制限する行為をともなうものであるから、その監護自体を人身保護法及び同規則にいう拘束と解するのを相当とするところ、被拘束者は六歳八カ月であつて未だ意思能力を有しないものであるから、拘束者らが請求者の監護を排して被拘束者を監護することは、人身保護法及び同規則にいう拘束に当るものというべきである。
ところで、人身保護法によつて救済を請求することが出来るのは、拘束の違法性が顕著な場合に限られるが、本件のように夫婦関係が破綻に瀕しているときに、夫婦の一方が他方に対し、人身保護法に基づき幼児の引渡を請求した場合、拘束の違法性が顕著か否かは、幼児が請求者によつて監護される方が拘束者によつて監護されるよりも幼児の幸福に適することが明白であるか否かを基準として決すべきである。これを本件についてみるに、前記認定によると、請求者、光雄ともに拘束者に対し深い愛情を抱き、その経済力、監護補助者その他の面から見てもともに監護能力を有し、監護場所の環境という面から見ても優劣はつけがたいばかりでなく、被拘束者が六歳八カ月の児童期に達する就学直前の男児であることを合わせて考慮すれば、被拘束者が請求者によつて監護される方が拘束者らによつて監護されるよりも被拘束者の幸福に適することが明白であるとは到底いうことができない。
四従つて、本件拘束については拘束の違法性が顕著であるとは認められず、本件請求は理由がないこととなるから、これを失当として棄却し、人身保護法第一六条、第一七条を適用して、主文のとおり判決する。
(中川臣朗 大串修 河村潤治)